野辺山100キロウルトラマラソン完結編
2008 / 05 / 28 ( Wed )
撮影は、zephiyama画伯


馬越峠を走り始めると、先を歩く選手の姿が多く見うけられる。

峠の特徴として、最初はなだらかなスロープから始まって、徐々に標高が厳しくなり
傾斜もますます鋭角になってくる。

峠頂上付近では、傾斜15度の壁が選手を待っている。

コース途中より視界が開け一瞬に、八ヶ岳連峰
の勇姿を拝むことができる。

素晴らしい風景に見入っていると、眼下には小さな選手の一群が見える。

これから峠越えを始める選手を眺めると、なぜか嬉しくなる。

木蔭に吹く風は、心地よいものだが、これがなかなか危険な代物である。

疲労した選手を、睡魔が襲うのだ。

危険な領域に足を踏み入れると、地獄が始まる。

白夢をさまようように、身体も左に右に揺れておぼつかない状態に陥る。

ここに来て思うのだが、峠が見えないので空に向かって上るよな錯覚に気づく。

麓から必死で上っていると、歩いている選手から言葉をかけられます。

“いや〜頑張ってますね!!”と、エールを送ってくれる。

ここまでは、上りを歩き下りを走る作戦で、ここまで来た。

体力温存で、この激坂に挑むことを目的としていので、走る事が本望なのです。

何度も左右に蛇行をくりかえしながら、峠まで繰返す言葉は…“まだかよ?
キツイ!!“と。

坂を上ると言うことは、
自分の体重を持ち上げることになります。

平地を走るようには、うまくはいかない。
峠まで約5キロを、約40分程で越えること…これが目標です。

峠までの中間地点に1ヵ所だ
給水エイドがある。
エイドから坂を流れ落ちてくる水を発見する。

ようやく、道なかばからの勾配を思うと泣けてくる。しかし、これも鍛錬だと自分に言い聞かせながら、必死に激坂を上る。

ばななさんより預かった無線機で、コールするが山間部では
電波も届かないようで応答がない。

数時間前に交信したときの状況から察すると、すでに馬越峠麓に到着しているはずだ。


緑の山に棚引く白線が、鮮やかに遠望される。

目を凝らしてその線を眺めると、選手らしい人影が小さく見える。

“まだまだあそこまで行くのだ。”と思わず言葉が出てしまった。
それから数分後見覚えのある曲がり角に達した。
もしかしたらその先は峠か?と、期待させるが裏切られてしまう。
こんなことが数回経験していると、これまでの記憶が曖昧になってしまう。

また、同じように見覚えのある角が見える。
“またあ?”と呟くと、山が切れていた。
そう…馬越峠が現われたのだ。
人の声が近づくと、まもなくエイドになる。
この峠は、午後になると風は強く吹きぬける道でもある。
これから峠を上る選手は、疲労と冷たい風が待ちうけている。
それを思うと、やっと辿りついたぞ!!と、大声を出したかったが遠慮してしまう。

馬越峠:撮影は、ヒロ児玉画伯



そう云えば、

標高1620mの馬越峠で、”ヒイヒイ…!”と言っている場合じゃありませんよ!!

75歳でエベレスト登頂に成功した老人が、この日本に存在します!!

その老人こそ、プロスキーヤの三浦雄一朗さん。
三浦雄一郎:75歳





“涙が出るほど厳しくて、つらくて、うれしい”…登頂した時の、彼の言葉である。




そこに至るまでの膨大な時間…“厳しくて、つらくて”を、
“うれしい”が全体を
太陽のように包み込んでいる。

この一瞬こそが、冒険家に与えられる至福の喜びに違いない。

馬越峠とエベレストを比較する自体が滑稽ではあるが、同じような気持ちで必死に上ったものしかわからに世界は共通するのではないでしょうか?
今与えられた時間の中で、僕立ちは必死に取り組んでいれば同じ喜びを得ると硬く信じている。
ギリシャで行われるスパルタスロンも確かに過酷であるが、世界には我々が全く知らない
過酷なスポーツがある。

サハラマラソンもそのひとつ。
次ぎの過酷さを求めて、サハラ砂漠に2008年3月下旬に立つことになる。

サハラマラソンを完走した間寛平さんの言葉がある。
“今しかないんや〜!!”
老いと競うような僅かな言葉に感銘する。

限られた時間を有効に生きる。
寛平さんの大きな夢…世界横断。

71歳でサハラマラソン完走を目指した飯田さん。
“細細としたことは、Nothing!”

多分同じ熱い気持ちが、彼女を突き動かしているはずです。

そして、
私も同じウルトラランナーとして、誰もが知らない達成感を得てみたいものだ。

いつも左右に5キロの鉛を入れた靴をはき、重いリュックを背負って街を歩いた。


電車に乗れば、つり輪で懸垂をする。
彼の日常生活のシーンである。我々にはできないような地道な努力と忍耐を求められる日常を過ごしているのである。
自らの夢を叶えて、なお人を勇気づける…そんな人間になりたいものだ。

峠から眺めた風景は、歪曲した地平線上に八ヶ岳連峰の山々が臨まれる。
眼下には、南相木村の集落が小さく点在していることがわかる。

馬越峠は、第三関門である。

時計を気にすることもなく
一気に坂を下る。その標高差は350m余り。

坂は、身体を下に預けるだけで十分。

足を単純に置く感覚で、スピードを加速していく

先行する選手を次々に抜いていると、ヒロ児玉さんに遭遇した。

少し会話を楽しむが、馬越峠にはほとほと降参状態らしい。
また、睡魔にも襲われて難儀しているようだ。
まだまだ、レースはこれからだ!と、激励して先を進む。

下り終えると長閑な川上村に至る道路に行き当る。

ここを右折すれば大きな川に沿うように、初夏の風景を楽しむことができる。

ところが、私の体力はすでに完全消費しているようで、走ろうとする気力が湧いてこない。
胃の具合は、牛乳とチーズのお陰で不調を訴えることはない。

ただ身体が言うことを聞かない。足が上がらない。

第4関門は、この川上村である。

ここのエイドは有名で、うどんが自慢だ。
ヒロ児玉さんとは途中で会うことになり、二人でうどんを胃に流しこむ。
疲労からくるのだろうか…味覚を感じない。
どうも神経に異変にあるようだ。

川上村エイドを後にして二人でスタートするが、どうやらヒロ児玉さんに平走ことができない。
仕方なくヒロ児玉さんに先に行ってもらうことにした。
馬越峠で使い果たした体力は、再び回復することはなかった。

川上村を抜けると、野辺山までだらだらとした坂となる。
ここが一番つらいかもしれないステージだ。

これからは、
坂道トレーニングをしなければいけないな!…・と反省することしきりなり。

坂を歩いていると後続の選手に抜かれる機会が多くなる。

無線機で、ばななさんと交信すると先ほど川上村エイドに到着したようだ。
距離にして約3?程度である。


95?地点を過ぎると、私の横を通過しようとする車から声がかかる。
Zephiyamaさんご夫婦である。

聞けばこれから自宅があるつくばまで約7時間をかけて帰宅するらしい。

会話から、10時間12分で完走したことを知る。

萩往還250キロから2週間後の野辺山100キロマラソンを考慮しても、正直に云って10時間台に驚いてしまう。流石だ!!

ヒロ児玉さんが、先を走ってるようだが確認できない。

ばななさんも少し距離を縮めているようだ。

そして、自分にも後少しだ!と、最後の力を振り絞る。

野辺山までの残り5キロは、最後の試練であった。

あと僅かな距離が長く感じる。野辺山に接近するとスピーカーから女性アナウンサーの声が聞き取れる。

“お疲れ様!”“お帰り!”と、ゴールする選手を向かえているようだ。

直線距離にして、わずかな距離をわざわざ遠廻りするので精神的なストレスは並大抵のものではない。
目の前に置かれた餌を、ご主人様の命令で待っている犬のようだ。

野辺山駅前を通過して、左折すればFinishも近い。
萩往還250?マラニック同様に野辺山100?は、スパルタスロンに向けての通過点に過ぎません。


当たり前ですが、至福の達成感を得ることはできません。

必死に求めたgoalこそが、この達成感を得ることができるのです。

足元にも及ばない人生の先輩達の足跡を追いながら、本当の意味での達成感を得たいと思います。

まずは、スパルタスロン。
次ぎはサハラ砂漠が待っている。

そして時間と競うよう、次ぎの課題を追うことにしよう


“涙が出るほど厳しくて、つらくて、うれしい”
と、


こんな言葉を吐いてみたいものですね。






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コメント
--素晴らしい--

とても読み応えのある感動する完走記でした。三浦さんのような言葉がだせるような未知の世界に挑戦し続けること。生きている間しかできないことですし,仕事のための人生でなく,人生のための仕事というくらいで楽しみたいですね。
完走記ありがとうございました。
by: 原始人ランナー * 2008/05/30 22:07 * URL [ 編集] | page top↑
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正直言うと、今回僕はゴール後、泣きそうになりました。。
萩往還での走りがあまりにも不甲斐なくて、この野辺山では今の自分の力のすべてを出し切ろうと思っていたからです。歩かずに走り通してくれた自分の足への感謝の涙でした。。
by: zephiyama * 2008/05/29 14:40 * URL [ 編集] | page top↑
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